6th
【質問】
中世ヨーロッパなら,徴発隊というか普通の軍隊が村襲って皆殺し,てのが普通?
【回答】
徴発・略奪って敵国の領内ではともかく,味方領内ではそんなに人を殺さないし,皆殺しや虐殺なんてもってのほか.
農奴制は土地とセットになった労働源という考え方をされていたので,「生かさず殺さず」でおくのがベスト.
自国か,敵国でも戦後に維持予定なら,生かさず殺さず程度には残すか,代金をくれたりするもんだよ.
無論,空手形に終わることもあるが.
何故かと言うと,殺しちゃったら来年以降,略奪する相手が居なくなってしまう.
目的は物資とか金,ついでに女とかの奴隷であって,命を奪う事じゃあないので.
だいたい,食い物たって小麦刈るだけじゃどうしようもないんで,地元住人に粉ひかせたりパン焼かせたりする もんだぜ.
殺しちゃ,そんなことさせられんだろ.
大体,この時代の農業というのは,現代ほど効率が良いわけでも無いし,人手がかかる上に土作りなどのノウハウも必要なので,代替が利きにくい.
流民捕まえてきて,いきなり使い物になるのかというと・・・・.
あと,中世欧州では不衛生な環境に置かれていたことから,ペストが大流行して,伝染病だけで人口ががっつり減っていた時代でもある.
まー,ローマ帝国時代のインフラの多くが無くなって,高度な土木技術の多くも消失してしまっていた時代だしね.
ローマ時代に作られた橋なんかを見て,
「こんなすげー橋,人間に作れるもんじゃねぇべ」
「きっと悪魔に作らせたにちげぇねぇ」
なんて,素で言い合いをするような文明レベルだ.
軍事板,2011/04/12(火)
青文字:加筆改修部分
【反論】
まあ問題は,中世ヨーロッパにおいて,「敵国でも戦後に維持予定」ってのがどの程度あったかですが.
中世ヨーロッパの戦争ってのは,軍の基本単位が,騎士とその手勢,もしくは傭兵団なわけで,「それぞれの集団がおおよそ独自の判断で,可能かつ必要と認めた」やり方で,占領なり略奪なりするわけです.
さて,数十人から多くて百数十人の,大して金持ちでもない武装集団が,「戦後統治を考えて生かさず殺さず」とか,「出来る限りの対価を払う」とか考えるでしょうか?
こういったことからしても,黒犬騎士団的なやり方が一般的だったろうかと思われます.
【再反論】
「思われます」じゃなく,ちゃんと史料読みなさい.
まず,傭兵って言っても他国人じゃなく,自国人も普通.
例えば100年戦争では,北フランスがイギリスについて,南フランスがフランス王朝に付いてるというか,そもそも英王が,
「親戚のうちにもフランスの王位継承権ある!」
というのから発生.
そんなわけでフランス人同士が傭兵として,イギリス側に付いたりフランス側についたりしている.
北フランス出身でフランス側に傭兵として参加とか,南フランス出身でイギリス側に参加とか,割と普通.
また,外国人傭兵もヨーロッパのほかの地域,特にイタリア半島地域からよく来ていたが,彼らは傭兵としての給料を領主から貰うだけで,全ての生活を賄ってる訳じゃない.
戦争やらない期間(特に冬,また休戦中で「今年は戦争やらない」な時など)は,「山賊」として生計を立てている.
外国人傭兵は戦争の無い時期は解散して,故郷に帰るのはごく一部.
帰っても食っていけないから傭兵になるわけで,じゃあ戦争が無い期間は何をするかというと,これが山賊.
あるいは何処かの領主だが,戦争になると部下引き連れて,出かけていって傭兵参加ってのもいる.
そんな彼らが,「戦争してる場所である目的地までの旅費」や,「給金払われるまでの生活のための蓄え」を,どこから調達すると思う?
それが,村や町を襲う略奪なんだよ.
村を完全破壊して住民皆殺しにしたら,翌年以降,そこを通って戦争に参加するための資金調達が出来なくなる.
山賊にしても,自分の活動地域の,収奪する相手を皆殺しにしてどうすんだ.
皆殺しなんて,山菜を取りすぎて翌年以降,生えて来なくなるというようなことをやらかすのと同じくらい,アホのする事.
傭兵ってのは商売で生活の手段なんだから,自分で自分の首を絞めるようなことはしない.
少し考えれば分かるだろう.
あんたの中の傭兵ってのは,モヒカンにパンク・ファッションの,世紀末のヒャッハー集団なのか?
ただし,中国の歴史に置いては少し事情が違う.
人口が多すぎるし,戦乱のたびに流民が発生して,他の地域に移住したりするんで,多少,村が滅んでもあまり気にされないってのが,支配者レベルにまで定着した認識になっている.
そんなわけで戦争になったら,傭兵どころか正規軍が村を脅して,徴発どころか殺して略奪など,当たり前というか,それが前提.
補給は現地調達が基本というのは,孫子にも書いてる常識だし,そもそも飢えた流民が,侵入した地域の元住民を虐殺して食い物を奪い,そのまま土地に住み着くとか,あるいは食い尽くしたので食糧求めて,他の地域に移動を繰り返すとかが,戦乱期には割りと当たり前に見られるというふうに,地域によって多少略奪行為の事情や形は異なる.
ただまあ,そういう略奪集団化(数十とかじゃなく,多いときは数万~数十万単位になるけどね)した連中が流入して領地を荒らすのは,侵入される領主側にとっては,無視できない深刻な問題になるけどね.
まとめると,
来年もまた同じ村を通過して,路銀を強請るから,「金づる」として残しておく → 西洋中世~近世期
どうせ人間一杯居るし,減ったら減ったで,滅んだ村に難民を住ませて開墾させるから問題なし → 中国古代~近世期
喩えるなら,
前者がカツアゲするDQNやヤクザ,
後者が社畜を使い捨てするブラック企業だな.
軍事板,2011/04/12(火)~04/13(水)
青文字:加筆改修部分
【反論】
それはあくまで,「来年もまた通る」場合限定の話ですね.
自分のテリトリーならともかく,次に通る機会があるかもわからない他所の土地で,獲れるだけ獲るのを控える理由が思いつきませんが.
【再反論】
お前の考えている戦法で行くと,街道沿いに行くことはありえない,とか思っているなら間違いだ.
交通網が発達してない時代なら,補給が楽にできる村落沿いに進撃路を設定するんだから,また通るに決まってんだろ.
中世期の戦争は,交通網がかなり限定されているので,主要な街道以外は歩けない.
街道以外は,全く開拓されてない未開地や,整備されてないので雨が降れば通行不可能になる,獣道以下の「原野」状態だ.
そんな所を進撃路にできるわけがない.
荒野の一歩手前のような場所で軍隊が,それも補給も無しで行軍などできない.
第一,中世欧州の戦争は農閑期にやってんだから,短期決戦なんてそうそう出来ねぇよ.
現代の感覚からしたら,何年もダラダラやっている戦争もザラだ.
大体,住民を虐殺してしまったら,次から補給が上手くいかなくなるぞ.
特に水の確保が厳しい.
中世欧州では,ローマ時代のインフラの崩壊で,水資源の確保が難しいうえ,あっちは硬水なので,泉や池などがあっても,すぐには飲めない.
どんなに綺麗に見えても煮沸しなければならない.
他方,行軍などの激しい運動をした日には,最低でも一人当たり5~13リットルもの水が必要になってくる.
井戸を確保できても,手持ちの容器などで持ち運べる量は限りがあるし,機動性が低下するので,出来れば村落沿いにちまちまと水を補給していく方が,効率が良い.
農奴は土地とセットになった,「領主」の財産の一部なので,その領主に雇われた「傭兵」が,領主の財産である農奴を,無断でぶち殺したらどうなるかは,お前でもわかるよな?
現代で言えば「業務上横領」になるんだぞ.
どうしても自分の創作の都合により,史実を捻じ曲げたいというのなら,おファンタジアなハナシにしちゃえばいいよ.
ライトノベルお得意の,「似非中世世界」にでもするがいい.
「おファンタジアな」世界なら頭使わなくて済むぞ(笑)
荒野を軍隊が無双行軍しても,誰も突っ込まない(笑
)
軍事板,2011/04/12(火)~04/13(水)
青文字:加筆改修部分